お酒を飲みたい!という欲求はアルコール依存症患者にとっては、単なる「仕事が休みだし美味しいビールが飲みたい、あの店でワインを飲みたい」という生半可なものではありません。
私個人の経験で言えば…引っ張られるような、飲める状況であるように今すぐ周りを整えたい。
そして、酔いが回ると「もっと酔いたい」と、酔いを引き連れて自ら底無し沼に入り込む気持ちとでも言うのでしょうか。ほとぼりが冷めれば飲んでいました。
ずいぶん昔のことですが、とんでもない有り様で、当時は私の機嫌を良くしようと酒を用意していた人が居たから「酒出せ!」と暴れることはありませんでしたが、それがもし「もう飲ませない」と本気で言われたなら酷い目に合わせていたでしょう。
何度か言われましたが相手も疲れたのか従うばかり。
しかし、もしもその後の状況が違っていて、何のきっかけも訪れないまま欲求が強くなる一方で悪化していたら、回復した今の姿はあったのか。そこが疑問なのです。
意地でも飲んでいたかもしれないし。我慢できないからアルコール依存症は恐ろしい病気なのです。我慢というブレーキが効かなくなるのだから転落していく他ないのです。
少し前にアルコール依存症治療にレグテクトという新薬が導入されたニュースを見ました。従来の薬は服薬中に飲酒をすると不快症状を起こす効能でした。
アルコールが体内に入ると悪酔いさせるというもので、悪酔いの成分「アセトアルデヒド」を蓄積させ、とてつもない悪酔いをしてしまい、お酒に手を出せなくなる事もあるのだそうです。
ですが、アルコール依存症の症状である「飲みたい」という欲求を減らす薬ではないので残念なことに、なかなか服用が続ず逆戻りする人も多くいました。
新薬のレグテクトは飲酒に対する欲求を下げるのだそうです。なんでも、アルコール依存症患者の脳内の興奮性神経のグルタミン酸作動精神系活動を抑制するということです。
脳を含む体内のアルコールが少なくなるとグルタミン酸が過剰に存在し強くアルコールを求めるのですが、このレグテクトはアルコールを求める神経そのものを鎮める作用があると。
脳の機能が抑えられるぶん、酔ったようにフラフラしたり気持ちが悪くなることがあるそうです。
禁煙外来で処方される禁煙薬みたいなものでしょうか。タバコのことを考えただけで吐き気がしてジタバタしたくなる薬です。確かにいいかもしれませんね。
「ああ。飲みたい」と思いながら断酒するのと「飲みたい。けど飲まなくていいかも?」と思う断酒では比べ物にならないですね。
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